これは衿になる部分 機械で編むのでつながっているが白い部分の糸を引っ張って抜いて１枚１枚バラバラにする。使うのはオレンジの部分だけ これを２枚＋捨てる部分１枚の３枚ずつ編んでいく なぜ10枚20枚 続けて編まないのかというと、色々編み機の特性があって、続けてたくさん編むとバランスが崩れて衿の形が狂ってしまうからで、２枚目の形を崩さないために、３枚目にも同じ大きさの捨てる部分も編む
そんなことはどうでもいいのだが、この捨てる部分の糸はどんな糸で、コストにどう反映されるのかが問題になってくるが、これは編み屋さんが自腹で安い「捨て糸」を調達する場合がほとんどで、たまにこちらでもう使わないような半端な糸を提供したりもするが、いずれもコストには関係ない。
今日この衿をバラバラにする作業を手伝っていたのだが、そこに例の会長が通りかかって、多分なんぞ言ってくるやろなと思ったら案の定、足元に積んである捨てる部分を見て
「これはいらんやつか？」
「そうですね」
「えらいたくさん捨てるんやな」
「そうですね」
「そうですねってお前 そんな無駄なことしてて利益出せるんか」
「はあ？！ 利益が出るかどうかよそのことは知りませんがな」
「よそのことってどういう意味や！」
「別にうちが捨て糸支給してるわけじゃないんだから 編み立て屋がいくらで捨て糸調達してなんぼの利益になるかなんて知るわけないし関係もないでしょ！」
「えっ うちの糸と違うんか？」
「・・・・・・」
そうかあ うちが支給しとるんじゃないんか... と独り言を言いながら去って行った。
向かいの席で仕事してたおばちゃんが
「あんた もう... ヒヤヒヤしたがな あんた最初っから喧嘩腰やったし 顔がマジやったし」
どうせまともなこと喋ってこんのはわかっとるし、喋りかけられる前から腹たってんやから しゃべりかけられただけで戦闘モードになってしまうわ。
この間なんかゴミ箱に捨ててある15cm四方くらいの編地を拾ってきて「これは何で捨てとんや？」って聞いてたもんな いらんから捨てるに決まっとるやろ！
そうそう 前の専務(会長の実の弟)が、落ちとるゴミも自分のもんやと思とるからなって言ってたな。
